前回お話しした、「電子カルテの選定・導入に向けたジレンマ」のうち、院長先生を含む経営陣が率先して

検討・導入を進める場合(トップダウン)のジレンマを詳しくご紹介したうえで、解決策を探ります。

「トップダウンのジレンマ(現場との壁)」

① 今の運用(業務の流れ)を変えたくない現場。

「今の仕事のやり方が一番」という勘違いや、「昔からこの手順で仕事をしている」という

問題意識の希薄さは、結構厄介な壁になります。

多くの人は変化することに消極的で、特に慣れ親しんだ仕事のやり方を変える事には

不安というより拒否反応を示す人もいます。

また、「この業務は私がいなければ円滑に回らない」という、善意の思い込みで自分の存在意義を

確認している人が多い現場では、システムによる「特定の人に依存しない」仕事の進め方は

容易には受け入れられないのではないでしょうか。

=壁を超えるヒント=

先ずは、「この作業は手間がかかる」や「毎回こんなことをやるって無駄だよね」といった面倒な業務が

どの程度の頻度(5回/日や3回/週、など)で発生して、その都度どの程度の時間を

費やしているか、計ってみてはどうでしょうか。

そして、電子カルテの導入によってその作業がどの程度減るのかをスタッフの皆さんで分析してみてはどうでしょうか。

例えば、各種依頼書の属性の転記作業や、至急検査の結果シートを持って院内を走り回る時間が

無くなることによって、自身の本来の業務に専念できる時間が増えることを数字で理解して戴きます。

それまで以上にご自身の業務を丁寧に進める事ができることを実感して戴けると思います。

② 電子カルテの操作に不安がある現場。

明確な理由のない不安が大半で、多くはキーボード操作や、紙ではなく画面による指示や

依頼に関する業務の導線が理解できていないという「不安」です。

以前(2010年ころまで)は、半数近くの看護師さんが「電子カルテが導入されたら辞めます」と

言って反対(抵抗)されたこともありました。

現在はそのように極端な状況はありませんが、紙(伝票)が無くなることへの不安は残ります。

=壁を超えるヒント=

業務の導線に関しては、現在のワークフローに合わせた電子カルテの運用・操作手順を個々の

業務に関して説明し、理解して戴くことで多くの不安は解消されるはずです。

それに、電子カルテになったからと言って紙(伝票)による依頼や指示については、合理的な

範囲で残すことで不安を減らして戴けるのではないでしょうか。

また、現在はタブレットやスマホの活用や、更には音声入力などの機能がでてきており、

日常生活で活用されているスマホのサービスに近いことを理解して戴くことも重要です。

トップダウンで導入を進める場合の「壁」とその解消のヒントに関して、「今の運用(業務の流れ)を

変えたくない現場」 と 「電子カルテの操作に不安がある現場」 の2点に関してお話ししました。

当てはまることはありましたでしょうか。

長くなりましたので、残りの2点に関しては、次回お話しさせて戴きます。